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ストレス状態がひどくなると、食欲不振・不眠・頭重・動悸・胃のもたれ・便秘や下痢など、さまざまな症状がでるものです。これらの症状は自律神経の働きが悪くなったために起こります。
 自律訓練法(Autogenic Training)は、その自律神経の働きのバランスを回復させる治療法のひとつで、体調を整えることに役立ちます。自律神経機能が正常になると、血流がよくなり、皮膚温が上がり、呼吸が落ち着き、胃腸の働きもよくなって健康が回復します。
 別の言い方をすれば、自律訓練法は「体から心へ」働きかけて、体と心の緊張を低下させる治療法だといえます。たとえばカウンセリングは心の悩みや問題を話し合うことにより、心の問題から引き起こされた身体症状を治療していく方法です。これは「心から体へ」の働きかけによる治療法と言えます。これに対し、自律訓練法は体から心へ働きかけて心身の緊張を低下させていく治療法なのです。




自律訓練法は、もともとは精神科の催眠療法から生まれた治療法です。1890年、ドイツの大脳生理学者ボルゲット(Vorget)が、自己暗示により催眠と似た状態になりうることを発見しました。続いて、ドイツの精神科医シュルツ(Schultz)がこの研究を発展させました。
 そして、自律訓練法により自己催眠を重ねていくうちに、過度の緊張がとれ、疲労が回復し、心身ともにより健康になることがわかってきました。その後、様々な工夫と検討が加えられ、より簡単に改良されたものが現在のものです。
 日本でも1952年から導入され、今では広く普及し、心身医療機関の9割で実施されています。自律訓練法は、臨床的・経験的なものから科学的・段階的に構成された治療法ですので、誰でも安心して手軽に習得できるのが特徴です。



自律訓練法とは、ストレス緩和法あるいはリラックス健康法とも言え、次のような効果があげられます。
・蓄積された疲労の回復が得られる。
・イライラせず、穏やかになれる。
・自己統制力が増し、衝動的行動が少なくなる。
・仕事や勉強の能率があがる。
・身体的な痛みや精神的な苦痛が緩和される。
・内省力がつき、自己向上性が増す。




(1)
静かな部屋で、ベッドに仰向けに寝ます(椅子でも可)。
(2)
軽く目を閉じて、体の力を抜きます。
(3)
公式を繰り返し心の中で唱えます。頭の中にイメージしながら、何回か繰り返します。


 このようにしながら進めていくわけですが、暗唱する公式は次の7つから成っています。

基礎公式 「気持ちがとても落ち着いている」
第1公式 手足の重感「手足が重たい」
第2公式 手足の温感「手足が温かい」
第3公式 「心臓が静かに打っている」
第4公式 「呼吸が楽にできる」
第5公式 「お腹が温かい」
第6公式 「額が涼しい」

公式は7つですが、これがすべてできなければ効果がないということではありません。実際には、導入の初期段階では第2公式までの練習を行い、大部分の人が第2公式まで習得した自律訓練法を行って効果をあげています。練習時間は1回3〜5分とし、毎日2、3回ずつ必ず続けます。
 毎日の生活の中で自律訓練法を実行することにより、心身の機能を正常に保っていくことができるのです。




できれば指導をうけることが望ましい
副作用の問題もあるので、できれば専門家の指導で正しい訓練法を習得しましょう。
静かな場所で行う
最初は静かで落ち着いた場所で。慣れてくれば通勤途中の車内や仕事の合間でもできるようになります。
空腹や満腹、便意のない状態で行う
気が散らないで精神的に安定している状態で行う。
ベルト・ネクタイ・時計等は外す
体を締めつけているものはすべて外すようにしまょう。
全身の力を抜く
リラックスした状態であればよい。
最初は15秒程度から、徐々に時間を延ばす
1回の練習は1分イメージ、覚醒、1分イメージ、覚醒のサイクルで…。
受身的注意集中
意識して注意していてはいけません。ポーッとしていて、なんとなく手のけだるさを感じるというような状態がよい。
必ず消去動作を行う
覚醒には20〜30秒かかる。最後に大きく深呼吸して目を覚ます。
胃の悪い人は第5公式(腹部イメージ)を避ける
ほとんど副作用はありませんが、出血・吐血の可能性もあります。気になる場合は避けるようにしてください。
心臓の悪い人は第3公式(心臓イメージ)を避ける
胃の場合と同様に、ほとんど副作用はありませんが、気になる場合はこの部分を省略してください。



仰臥姿勢(ぎょうがしせい)
仰向けになり、自分にあった枕を深くあてて首に力が入らないようにする。両腕は自然に体の脇へ少し離して置く。手の甲は上に向け、指・手首・肘の関節部分は心もち曲げる。両足は肩幅程度に開き、足先は扇形に開く。



安楽イス姿勢
ソファなど背もたれのあるイスを使う場合は、頭まで支えられるものがよい。両足をゆったりと床につけて、体全体でイスにもたれかかる。両腕は肘掛けに置き、顔はやや上向きに。



単純イス姿勢
背もたれのないイスの場合、両足は肩幅程度に開き、膝の角度は直角よりも少し鈍角になるように座る。両手はそっと大腿部に置く。手の甲を上に、指先はやや内側に向ける。頭は心もち前傾にするが、背筋は伸ばす。






まず、利き腕の練習からはじめましょう。
 右(左)手にそれとなく注意を向け、「気持ちが落ち着いている…手が重た〜い…」と呼吸に合わせて、ゆっくりと5〜10回となえる。このとき、右(左)手に力を入れないこと(血行が悪くなる)。
 右(左)手の重たい感じが出るようになったら、「気持ちが落ち着いている…右手が重たくて、さらに左手も重た〜い」というように、右手 → 右手 + 左手 → 両手 + 両足 へと範囲を広げていきます。

「気持ちが落ち着いている…両手両足が重た〜い…右手が温か〜い…右手が重くて、温か〜い…」というように、さらに左手、両足へと練習を進めていきます。
 日向ぼっこをしているイメージなどを思い浮かべるとよいでしょう。冷え性の体質の人には、お風呂上がりの練習が特に効果的です。


1回の練習が終わったら、右(左)手が温かくなってもならなくても、必ず消去動作を行ってください。
 自律訓練法は催眠と深い関わりがありますので、意識や筋肉の状態を通常のレベルに引き上げるために、この消去動作が欠かせません。


両手で握りこぶしをつくり、胸元に強く引き寄せる。つぎに思いきり手を伸ばしながらこぶしを開く。

その後、背骨を大きくそらせて背伸びをしながら、腹式呼吸を2、3回行う。




自律訓練法を行う際に大切な心構えがひとつあります。それは受身的注意集中ということです。言葉で表現するのは難しいのですが、本来、注意するということ自体は能動的な行動です。それを受動的にしなさい、というところに自律訓練法のポイントがあります。手に注意するのではなく、手のほうに注意がいっている状態とも言えます。そこはかとなく手に注意がいっている状態とでも言いましょうか。
 自律訓練法には副作用はほとんどありませんが、「自律訓練法10カ条」にあるように、胃の悪い人は第5公式の腹部のイメージ、心臓の悪い人は第3公式の心臓のイメージの実施は避けたほうがよいと言われています。時として、病気の部分のイメージを描くことで病気が悪くなる可能性もあります。
 もちろん、自律訓練法は一人でもできるのですが、習得する場合には指導者のもとで正しく覚えた方がいいのは言うまでもないことです。副作用の問題などより、自己流で誤った自律訓練法を習得してしまうことの方が、もっと問題なのです。自律訓練法は安心で簡単な方法ですが、やはり「生兵法は怪我のもと」です。

 ストレス時代と言われる今日、多くのストレッサーに囲まれて生活している私たちにとって、自律訓練法は治療現場のものだけでなく、心身をリラックスさせ仕事の能率を上げる方法として、今後は職場や家庭などさまざまな場所での応用が期待されています。